相続の手続

相続登記は自分でする!司法書士による本人申請成功7つのアドバイス

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
House model and businessman

「相続登記をしたいけど、司法書士に頼むとその分費用がかかるし…」

ご家族にご不幸があり精神的に不安なうえ、何かともの入りでもある時。そう思うのも当然です。

「親1人、子1人。遺産は2人で住んでいたこのマンションだけ。これなら自分で相続登記できるかも…」

そうかもしれません。あくまでケース・バイ・ケースですが、相続に関わるヒトとモノがシンプルであれば、相続登記の申請は決して難しいものではありません。

相続登記の手続は基本的には下記の4つだけです。

  • 誰が相続人かを確認する
  • 遺産の全容を把握する
  • 誰が相続するかを確認する
  • 要な書類を用意して法務局に申請する

おそらく心配なのは、少しがんばれば自分でも相続登記ができるケースなのか、手間ひまを考えると司法書士に依頼した方が結局は得なケースなのか、の見極め方が分からないということでしょう。

今回は、相続問題専門の司法書士が、「なるべく自分で相続登記を行いたいという方」のために、ごくシンプルな相続を例にしながら、相続登記申請のポイントをご説明いたします。

実際に司法書士が行う手順をもとに、失敗しがちなポイントを解説し、これさえ読めばシンプルな相続なら誰でもご自分でできるように説明しています。

少し複雑そうな相続に直面している方でも、最後までお読みいただければ、ご自分ですべきケースなのか、司法書士に頼むべきケースなのか、判断基準ができ上るはずです。

相続にかかる費用を節約したい方は、ぜひ参考になさってください。

houmukyoku2

すべての登記が難しいわけではありません

目次

1.相続登記、3種類の分類とは

誤解を恐れず大きく分類するなら、相続登記は「法定相続によるもの」、「遺産分割協議によるもの」、「遺言によるもの」の3種類しかありません。この3種類の相続登記は、相続の全体像を知ることによって自然と理解できるはずです(「遺贈を原因とする登記」をここに含める考え方もありますが、こちらは別の機会に譲ります)。

なお、相続人の中で、家庭裁判所へ相続放棄の手続きをした方がいる場合は、そもそも初めから相続人ではなかったことになります。その相続放棄をした方を抜かして以下の流れに沿っていけば相続手続は完了します。

1-1.法定相続による相続登記

特に遺言書もない場合、法定相続分(民法で定められた各相続人の取り分)によって自動的に配分が決まる相続です。相続人が配偶者1人と子2人ならば、配偶者が2/4、子が1/4ずつなど、民法で定められた順序と割合通りに申請書を作り、相続が開始したことを裏付ける書類を添付して登記申請します。

1-2.遺産分割協議による相続登記

遺産分割協議とは簡単にいうと、相続人全員で話し合って遺産を分け合うことです。重要な話し合いですから、協議書には市区町村に登録した印鑑(実印)を押し、印鑑証明書を提出しなければなりません。

遺産分割協議書に決まったひな型はありませんが、欄外に相続人全員分の捨印があれば、登記所に補正を求められた時にも対処しやすくなります。

また、「上記以外の財産で、本遺産分割協議後に存在が明らかとなった財産については、相続人〇〇〇〇が取得する」という文言を末尾に入れておきましょう。万が一、後から相続財産の見落しに気づいたとしても、遺産分割協議書の作り直しをせずに済みます。

土地や建物は、固定資産評価証明書ではなく、登記事項証明書を元にして記載してください。相続税の申告の際と違うので混乱しがちですが、両方を併記しておけば確実です。

遺産分割協議書が複数枚に渡る際には、割印(契印)も必須です。こちらについても相続人全員分が必要です。

1-3.遺言による相続登記

遺言書を法務局に提出してその内容通りに申請するわけですが、遺言書の扱いには注意を要します。封印してある遺言書は相続人などが立ち会って開封しないと過料(広い意味での罰金)に処せられることもあります。

また、公証役場で作成した遺言書以外は、検認という家庭裁判所での手続きを経ないと登記できません。検認は遺言書の偽造などを防止するための手続きだからです。

相続の全体像については、別記事「10分で分かる相続手続の全体像。突然の出来事でも円満解決するために」にて詳しくご説明しています。詳しくお知りになりたい方はご一読ください。

2.相続登記に必要な3つの「W」

いよいよ相続登記の申請の実践に入っていきます。まずは3つの「W」。つまり「When(いつ)」、「Where(どこで)」、「Who(誰が)」は何事においても大切ですよね。

2-1.When(いつ)=相続登記はできるときにしておく

相続登記はあなたの権利を守ってくれるものです。できる時にしておくことをおすすめします。

実は、相続登記を含め、不動産についての登記は必ず申請しなければならないものではありません。ただし、登記しておけば裁判沙汰になるのを防ぐことができます。

例えば、相続人全員の間で遺産分割協議が成立したにもかかわらず、法定相続による相続登記がなされ、さらにその共有持分(1筆の土地を何人かで共同所有している状態を想定してください。その各人の権利が共有持分です)が事情を知らない第三者に売り払われ、登記まで入ってしまったら…。

協議をした相続人の間だけなら、「話が違う」で片付くかもしれませんが、事情を知らない第三者の身にもなってください。最悪の場合、訴訟です。ちなみに、過去の裁判例では「第三者を保護すべし」との判決が出ています。

このようなトラブルを避けるために、不動産登記は必ず行っておきましょう。

2-2.Where(どこで)=管轄の法務局で行う

houmukyoku3

東京法務局八王子支局はビルの一角にあります

登記は相続される不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。八王子市内にある土地や建物ならば、南大沢の東京法務局八王子支局です。管轄は法務局のホームページの「管轄のご案内」で調べることができます。
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html

2-3.Who(誰が)=相続人中の1名だけでOK

この章の冒頭でご説明した「~遺産分割協議が成立したにもかかわらず、法定相続による相続登記がなされ~」という部分で、「そんなことできるの?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。それが、できるのです。相続登記を申請するのは相続人ですが、その中の1名が全員分を申請することも可能なのです(1名が自分の分だけを申請することはできません)。

もちろん、遺産分割協議や遺言による相続登記の場合、申請人になれるのはその不動産を取得することになった相続人です。この場合も、その不動産を取得することになった相続人が複数なら、その中の1名が全員分を申請することもできます。

なお、相続人の中の1名が全員分を申請した場合、他の相続人には権利証(正式には登記識別情報といいます)が発行されません。相続登記の後にその不動産を売却する場合などに余分な手間と費用がかかりますので、誰が申請人になるかは、よく考えて決めましょう。

3.関係するヒトとモノを調べ、それについての証明書を集めよう

3つの「W」が分かったら行動開始です。関係するヒトとモノを調べ、それについての証明書を集めます。「相続に関わるヒトとモノがシンプルであれば~」という前提で、ある事例を設定させていただきます。

<事例> 父(司法正男=80歳)が亡くなって、相続人は母(司法花子=75歳)と既婚の2人の息子(司法一郎=50歳、司法次郎=45歳)の3人。父は八王子に生まれ、一生八王子で暮らしてきました。相続財産は父と母が住んでいた土地と一戸建ての建物。いずれも父の名義で、住宅ローンの返済は終わっています。父の両親はすでに他界していますが、父の2人の妹は健在。母と2人の息子は、母が全財産を相続することで意見が一致しています。

ありがちなこのケースで、ここからは解説していきます。

3-1.登記申請に添付しなくても入手すべき書類

まずは、あらかじめ入手してチェックしておくべき書類をお伝えします。登記申請の際に添付することは求められませんが、必ず把握しておくべき情報がわかります。

3-1-1.登記事項証明書もしくは登記情報

登記事項証明書交付請求書

登記事項証明書交付請求書

まずは法務局で、相続財産である不動産の登記事項証明書を取りましょう。登記事項証明書は誰でも取ることができます。

ただし、住所が分かっていても、それだけで登記事項証明書は取れません。不動産を特定するための地番や家屋番号と住所は別ものだからです。もちろん、管轄の法務局に問い合わせれば教えてくれるので心配無用です。

古い登記事項証明書が手元にあったとしても、改めて登記事項証明書を取ることをおすすめします。今回の事例では、父が本当にその不動産の所有者として登記されているか、住宅ローンに関する権利の登記などが残っていないかなどを再確認するためです。

登記事項証明書を取る際は、必ず共同担保目録付きのものにしてください。この目録に、気が付かなかった相続財産が載っていることがあるからです。

登記事項証明書は1通600円ですから、今回の事例では土地と建物の分合計2通で1200円。窓口へ行かなくても、郵送で請求できます。申請書は法務局のホームページからダウンロードできます。
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/category_00002.html

なお、登記事項証明書の代わりに登記情報を取る方法もあります。登記情報は、いわばネット上の登記事項証明書です。こちらは1通335円で、画面に表示される案内に従えば簡単に取れます。しかし、操作を間違うと文字通り機械的に課金されてしまいお金を無駄にするので、登記事項証明書をおすすめします。
http://www1.touki.or.jp/

3-1-2.名寄帳

名寄帳(なよせちょう)とは、ある人がある市区町村内に所有している不動産の一覧表です。ありがたいのは、原則として固定資産税・都市計画税が非課税の不動産も載っていることです。非課税の不動産は毎年送られてくる固定資産税・都市計画税の納税通知書には載っていないため、相続が開始した際に見落とされやすいのです。

非課税の不動産には、周辺住人の共同所有として登記されている私道(「公衆用道路」と表記されます)などがあります。建物が大通りに面していない場合や建物の周辺に小道がある場合は要注意です。相続遺産に公衆用道路が含まれているかもしれません。

ある不動産が相続登記から漏れてしまうと、後で面倒なことになりかねません。

一部の土地の相続登記を抜かしたまま、今度は相続人が亡くなったとしましょう。誰も住まなくなったので土地と建物を売却しようと思っても、相続登記漏れがあるままでは売買契約ができない。遺産分割協議をやり直そうとしても、人間関係が疎遠になっていて上手くいかない。これが典型的なケースです。

名寄帳は東京23区以外では不動産所在地の市区町役場で取得でき、東京23区の不動産については各区の都税事務所で取得できます。郵送で取ることもできます。1件200円~300円程度ですが、無料で発行する市区町村もあります。

基本的には所有者本人しか請求できない書類ですが、戸籍を提出して相続人であることを証明すれば、相続人も請求できます。念のため、名寄帳は必ず取得してチェックしましょう。

3-1-3.権利証

被相続人が不動産を入手した時の、いわゆる権利証(正式には登記済証といいます)も確認しておきましょう。特に土地は、見た目は1筆でも実は複数筆に分かれていたというケースがよくあり、相続登記漏れの原因となります。権利証の不動産の表示の部分を見てチェックします。

3-1-4.売買契約書

被相続人が売買によって不動産を入手していたなら、売買契約書が残っているはずです。こちらも権利証と同じく、不動産の表示の部分を確認して相続登記漏れを防ぎましょう。

3-1-5.公図

公図(正式には地図もしくは地図に準ずる図面といいます)とは、土地を1筆ごとに区切った、まるで白地図のような図面です。ここまで述べた書類によってもまだ確信が持てない場合に使う手段ですから、とりあえずは参考程度に留めておいてください。

3-2.登記申請に添付するために必要となる書類

登記申請が確かなものであることを証明するために、申請に際して添付しなければならない書類です。

3-2-1.被相続人の戸籍

今回の事例では、被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍を集める必要があります。母が確かに配偶者であり、息子2人の他に子供がいないことを証明するためです。被相続人が子供をもうけることができるようになる以前のものは不要とされていますが、明確な基準はありませんので、すべての戸籍を集めるつもりでいましょう。

被相続人の配偶者や子供であれば、問題なく被相続人の戸籍を取ることができます。戸籍は1通450円、除籍・改製原戸籍(古い戸籍という程度の認識で大丈夫です)は1通750円です。

今回の被相続人は八王子から引越したことがないので、八王子市役所へ行って事情を話せば一度で用が足りるはずです。もちろん、郵送で請求することもでき、請求書に「被相続人司法正男のすべての戸籍を請求いたします」などと書き添えるだけで、担当者が遡って調べて送ってくれます。

もしも、引越や結婚などの際に八王子市の外へ(外から)本籍を移したことがあるなら、その戸籍も追っていく必要がありますので八王子市役所へ行くだけでは済まなくなります。

なお、「遺言による相続登記」の場合は、被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍は要求されません。相続財産の行方は被相続人が決めるのが大前提で、遺言は法定相続に優先します。ですから、被相続人のすべての相続関係を明らかにする必要はないのです。

被相続人が死亡したことが分かるもの1通だけで足りるので、かなり手間が省けます。

3-2-2.相続人の戸籍

被相続人の戸籍により誰が相続人なのか見当はつきました。その相続人が被相続人の死亡時に確かに生存していたことを証明するためにこの書類が必要になります。なので、この戸籍は最新のものだけで足りますが、被相続人の死亡日より後の日に取ったものでないと、法務局のチェックを受けてしまいます。

夫婦は同じ戸籍に入りますから、今回の事例では、母の分は父の戸籍でカバーできます。2人の息子はともに既婚で父の戸籍からすでに出て行っているので、それぞれ地元の市区町村役場に申請して、最新のものを用意する必要があります。

DSC_0092

被相続人が1つの市区町村内から引越しをしたことがないなら、戸籍を集めるのはとても簡単です

3-2-3.遺産分割協議書とその一部としての印鑑証明書

遺産分割協議書については、すでに1-2で述べました。遺産分割協議書の一部として、市区町村に登録した印鑑証明書も添付します。この印鑑証明書はいつ取得したものでも大丈夫です。

今回、申請人になるのは母です(2-3参照)。そして、財産を相続するのも母です。この場合、母の印鑑証明書だけは省略してもよいとされています。これは細かい部分ですし、分かっていても母の印鑑証明書も添付して申請する司法書士事務所も多いですから、あまり気にする必要はありません。

ところで、今回はなぜ、相続放棄ではなく遺産分割協議という手段を選んだのかお分かりですか?

第1順位の相続人候補者は配偶者(母)と2人の息子です。第2順位は配偶者(母)と2人の妹です。第1順位である2人の息子が相続放棄をすると、権利は第2順位に移りますから、相続人は母だけにはならないのです。また、2人の息子が相続放棄をしてから母と2人の妹で遺産分割協議をするのは二度手間というものでしょう。この場合は遺産分割協議が最も解決しやすい方法です。

住宅ローンが完済されていることもポイントです。もし、住宅ローンが残ったまま2人の息子が相続放棄をしたら、債権者である銀行の承認がない限り、2人の妹が残った住宅ローンの1/8ずつ(兄弟姉妹の法定相続分である1/4の頭割り)を負うことになります。2人の妹にしてみれば青天の霹靂です。

法務局のホームページを参考にしてください。
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html
21)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)の部分です。

3-2-4.相続関係説明図

相続関係説明図とは、被相続人と相続人の関係をまとめた一覧図です。家系図の一部をクローズアップしたものとイメージしてください。

厳密には、この書類は登記申請に絶対に必要なものではないのですが、添付すれば戸籍一式を返却してもらえるため、手間的にも金銭的にも作成するメリットがあります。

縦書きでも横書きでも大丈夫ですし、手書きでもかまいません(ただし、鉛筆書きだけは不可)。記載する内容も、司法書士事務所によってまちまちです。下記は当事務所おすすめのものです。

被相続人の氏名・最後の本籍・最後の住所・登記簿上の住所・生年月日・死亡日

優先権のある相続人の氏名・生年月日・死亡日(・離婚日)
※優先権のある相続人(配偶者や親や子供)が、すでに相続人ではなくなっていることを示すために記載します。

相続登記を受ける相続人の氏名・住所・生年月日

相続登記を受けない相続人の氏名

要するに、相続関係説明図には、それを見ただけで被相続人と相続人が特定できる情報を盛り込む必要があるわけです。

また、今回の事例では父の氏名に(被相続人)、母の氏名に(相続人)、2人の息子の氏名に(分割)と書き添えます。(相続)は遺産分割協議によりこの不動産について相続登記を受ける人、(分割)は相続登記を受けない人という意味です。

法務局のホームページを参考にしてください。
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html
21)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)の部分です。

3-2-5.被相続人の住民票の除票、戸籍の附票

被相続人の登記事項証明書上の住所が、戸籍上の本籍と異なる場合に添付が必要になります。

同一人物であることの証明は、氏名と住所の2点の一致によってなされます。たとえ氏名が一致していても、それだけでは戸籍で死亡が確認された者が、登記事項証明書の不動産の所有者だとは認定されないのです。

この部分をつないでくれるのが、住民票の除票や戸籍の附票です。住民票の除票には最後の住所の1つ前の住所が載りますし、戸籍の附票にはさらに前の住所まで載ります。

住民票の除票でつながらなければ、戸籍の附票で遡ってみるという順番がよいかと思います。住民票の除票を取る際は、本籍が記載されるようにチェックを入れることをお忘れなく。

今回の事例では被相続人は一生同じ場所で暮らしてきましたので、おそらく地理的には住所地=本籍地なのでしょう。しかし、「○○町1丁目23番4号」という住所と「○○町1丁目23番」という本籍は同一とはみなされないのです。

ですから、住民票の除票や戸籍の附票は、初めから「取るもの」と考えておいた方がよいかもしれません。いずれも1通200円~300円程度です。

3-2-6.相続登記を受ける方の住民票

相続人全員分は要求されません。正しい住所で登記するためのものですから、相続人の中で登記を受ける方のものだけで足ります。今回の事例では母の住民票だけです。

住民票は市区町村によって値段が違いますが、1通200~300円程度。3-2-2の相続人の戸籍とは違い、いつ取得したものでも大丈夫です。

申請書に住基ネットの住民票コード書けば住民票の添付は不要になるのですが、紛らわしいのがマイナンバーです。マイナンバーが記載されている住民票は登記申請には(一応)使えないことになっていますので、市区町村役場で住民票を取る際にはお気をつけください。

3-2-7.固定資産評価証明書

相続登記に限らず登記を申請するには登録免許税という国税がかかります。相続登記では、登録免許税を算出するために固定資産評価証明書が必要になり、相続登記の申請にも固定資産評価証明書を添付しなければなりません。

固定資産評価証明書は1通200円~400円程度です。取得できる役所、請求できる人は、3-1-2の名寄帳と似ていますので、固定資産評価証明書と名寄帳は一度に取ってしまいましょう。

裏ワザというわけではありませんが、固定資産評価証明書代を節約する方法もあります。

自分が相続登記を申請しようとしている者だと分かる一定の書類を、まずは法務局に提出して認証印をもらい、それを市区町村役場に持ち込めば、固定資産評価証明書の代わりとして登記申請に添付できる書類を無料で発行してもらえるのです。

ただし、市区町村によってかなり取扱いが違い、この方法を使えない所もあります。また、なぜか市区町村役場のホームページには紹介されていないので、必ず電話で確認してみてください。

ちなみに八王子市ではこの方法が使えます。南大沢の同じビルに法務局と市の事務所が入っていますので、ぜひ試してみてください。

また、毎年5月頃に送られてくる固定資産税の納税通知書に同封されている固定資産税・都市計画税課税明細書を固定資産評価証明書に代えて登記申請ができる法務局もあるようです。

以上の他、注意すべきは取得した日付です。固定資産評価証明書は、4月1日から翌年3月31日までの年度で毎年更新されます。そして、登記申請に添付すべきは、登記申請時点で最新の固定資産評価証明書です。

例えば、4月10日に取った固定資産評価証明書を使って翌5月10日に登記申請するのはOKですが、3月10日に取った固定資産評価証明書を使って翌4月10日に登記申請するのはNGとなります(4月に発行される最新のものが必要)。

3-2-8.相続登記の種類によっては必要となる特有書類

今回は「遺産分割協議による相続登記」を例にしましたが、もちろん、「法定相続による相続登記」や「遺言による相続登記」もシンプルなものであればご自分で登記申請をすることは十分可能です。

細部が異なることもありますが、3-2-3の遺産分割協議書に代えて下記の書類を添付して申請すると考えてください。

相続人の一部が相続放棄した場合
相続放棄申述受理証明書(相続放棄がなされたことを家庭裁判所が証明する書類です)

遺言がある場合
遺言書(公証役場で作成した遺言書以外は家庭裁判所の検認手続が必要です)

4.書面申請の申請書を作る

書類が集まってきたら、同時進行で申請書を作ることをおすすめします。申請書は登記のエッセンスを詰め込んだものなので、作成しているうちに頭の中が整理されるからです。

なお、登記申請には、オンライン申請と書面申請の2つの方法があります。一般の方なら、相続登記はそう何度もするものではありませんから、オンライン申請用のソフトを把握するための時間を省いて、書面で申請しましょう。

以下、書面申請の申請書の作り方をご説明していきます。

4-1.申請書のひな型を知る

法務局のホームページを参考にしてください。
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html
21)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)の部分です。

登記申請書というタイトル部分以外に8個の項目があります。

紙はA4サイズの一般的なコピー用紙なら問題ありません。必ず横書きにしてください。手書きでもかまいませんが、鉛筆書きは不可です。

4-1-1.登記の目的

所有権移転

今回の事例では、土地建物とも父が1人で所有していたからです。仮に父と母の共有物だったならこうなります。

司法正男持分全部移転

4-1-2.原因

平成〇年〇月〇日相続

日付はもちろん、戸籍に記載されている父が亡くなった日です。

4-1-3.相続人

(被相続人 司法正男) 東京都八王子市〇町〇丁目〇番〇号 司法花子
連絡先の電話番号 〇〇〇〇〇〇〇〇〇

もしも、法定相続による相続登記だったなら以下の通りです。

(被相続人 司法正男)
  持分4分の2 東京都八王子市〇町〇丁目〇番〇号 司法花子
    
4分の1 (司法一郎の住所) 司法一郎
    
4分の1 (司法次郎の住所) 司法次郎
連絡
先の電話番号 〇〇〇-〇〇〇-〇〇〇〇

この順番でこの内容が網羅されてさえいれば、改行やスペースは必ずしもこの通りでなくても大丈夫です。「4分の2」の部分を「2分の1」と書いても問題ありません。そのまま登記されるだけのことです。

ただし、住所は丁目や番や号などを省略せず、住民票の通りに正確に書かなければなりません。

名前の横には各自の押印(認印でOK)が必要です。さらに、この印鑑を余白に押し、捨印にしておくとよいでしょう。

4-1-4.添付情報

登記原因証明情報と住所証明情報

上記3-2-1~5と3-2-8の書類をまとめて、登記原因証明情報とカテゴライズしているのです。

住所証明情報は、もちろん3-2-6の住民票のことで、住所証明書としても問題ありません。

なお、3-2-7の通り、固定資産評価証明書も添付しますが、ここに挙げる必要はありません。法律で添付を義務付けられてはいないものの、実務上添付することになっている書類なので、このような扱いなのです。

4-1-5.申請年月日と管轄法務局

平成〇年〇月〇日申請 東京法務局八王子支局

申請は、法務局に書類一式を持参して行うのが断然おすすめです。申請の直前に相談窓口で不備がないか確認してもらうことができるからです。日付はもちろん申請する日を記入します。おすすめはしませんが、郵送で申請することもできます。その場合は発送した日付を記入してください。

4-1-6.登記完了後の書類を郵送で交付してもらうための文言

申請人の住所へ送付の方法により登記識別情報通知及び還付書類並びに登記完了証の交付を希望します。

登記完了後に発行されたり返却される書類を、法務局まで取りに行くのならこの記載は不要です。法務局がよほど近所にない限りは、この文言を記載して返信用の封筒を入れておきましょう。

権利証という重要な書類を送るので簡易書留が最もおすすめなのですが、4キロまで均一料金なので、レターパックプラス(赤い510円のもの)も便利です。

4-1-7.課税価格と登録免許税

3-2-7でも書きましたが、登記には登録免許税がかかります。固定資産評価証明書の評価額の1000円未満を切捨てたものが課税価格、課税価格に1000分の4を乗じて100円未満を切捨てたものが登録免許税です。

今回の事例の評価額は、土地が12,345,678円、建物が87,6543円だとします。

課税価格
12,345,678+87,6543=13,222,221
→1000円未満切捨→13,222,000円

登録免許税
13,222,000×4/1000=52,888
→100円未満切捨→52,800円

ポイントは、複数の不動産を1つの申請書で申請する場合、それぞれの評価額を1000円未満の部分まで合計して課税価格を出してから1000分の4を掛けることです。それぞれの課税価格を出し、それぞれに1000分の4を掛けてから合計するのではありません。

なお、登録免許税を算出してみたら1000円未満になった場合、登録免許税は1000円となります。

公衆用道路は3-1-2で書いた通り固定資産税・都市計画税は非課税ですから、固定資産評価証明書では課税価格が分かりません。それでも登録免許税の課税対象にはなりますから計算が複雑になります。

要するに、すぐそばの宅地の固定資産評価額の3割が公衆用道路の課税価格となるのですが、この計算は法務局の相談窓口で確認してもらうとよいでしょう。

4-1-8.不動産の表示

登記事項証明書から抜粋して書きます。

土地の場合
 地番 地目 地積

一戸建ての場合
 家屋番号 種類 構造 床面積

なお、不動産番号(登記事項証明書に載っています)を記載すれば、これらに代えることができます。

登記上、敷地と建物が一体化したマンション(敷地権付き区分建物といいます)の場合はかなり複雑になりますので、法務局のホームページを参考にしてください。
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html

数か所に(敷地権付き区分建物)の場合として載っています。

4-2.登録免許税の台紙を作る

書面申請の場合、登録免許税は、現金または収入印紙で納付することになります。現金納付といっても、銀行であらかじめ支払ってその領収書を提出する方法です。

いずれにせよ領収書か収入印紙を貼り付けるスペースが必要なので、そのための台紙を作るのが一般的です。

台紙はA4のコピー用紙を白紙のまま使いましょう。あくまでこれも申請書の一部ですので、相続人の名前の横に押した認印(4-1-3参照)で割印することをお忘れなく。

5.登記申請は法務局の窓口でするのがおすすめ

houmukyoku1

書類一式が整ったら、さあ窓口へ

4-1-5でも書きましたが、申請の直前に相談窓口で不備がないか確認してもらうことをおすすめします。細かい部分までは難しいですが、全体的なアドバイスはしてもらえるはずです。

登録免許税の収入印紙も、最終確認の後に法務局内の売店で買って台紙に貼ればスマートです。

5-1.原本還付請求

3-2-4の相続関係説明図のところで少し書きましたが、申請に使ったほとんどの書類は登記完了後に返却してもらうことができます。これを原本還付請求と呼びます。

原則として、原本還付請求する書類はコピーを取り、そのコピーで代用しては申請書類一式を組み立てるものと考えてください。原本もクリアファイルなどに入れていったんは提出しますが、登記完了後にクリアフィルごと返却されます。

代用品であるコピーには、大きめの赤字で「原本還付」、小さめの黒字で「原本に相違ありません」と記入し、申請人の氏名も書いて、その横に認印を押します。「原本還付」や「原本に相違ありません」の部分は、法務局にゴム印が置いてありますので、それを利用してもよいでしょう。

代用品であるコピーが数枚に渡るなら、2枚以降からは割印でつなげれば、いちいち「原本還付」、「原本に相違ありません」と記入しなくて済みます。

なお、戸籍だけは扱いが違います。相続関係説明図を添付するのと引き換えに原本還付されるので、コピーを添付する必要はありません。戸籍はけっこうな枚数になることもありますから、その点からも相続関係説明図は作成すべきでしょう。

今回の事例では、申請書と相続関係説明図以外はすべて原本還付請求できます。ただし、3-2-7で少しだけ触れた固定資産評価証明書代を節約する方法を使うなら、その証明書は原本還付請求できません。あくまで登記申請専用の書類なので、返却するという便宜は図られないのです。

最後に、4-1-6で書いた返信用のレターパックプラスです。こちらは原本である書類を入れたクリアファイルに一緒に挟んでおくとよいです。

5-2.登記申請書類一式を組み立てる

申請書を一番上にして、添付情報として集めた書類とホチキスで束ねます。ホチキスは左端の上下2か所を留めます。

添付情報の順番に決まりはありません。強いていうなら、登記官が分かりやすいように重ねることがルールでしょうか。ご参考までに、今回の事例なら当事務所では以下のような順番で束ねます。

申請書(収入印紙を貼った台紙も含む)
相続関係説明図
遺産分割協議書(コピー)
法務正男の住民票の除票(コピー)
法務花子の住民票(コピー)
固定資産評価証明書

~以下、原本還付請求用のクリアファイルに挟む~

法務正男の戸籍一式
法務花子・法務太郎・法務次郎の戸籍
遺産分割協議書
法務正男の住民票の除票
法務花子の住民票
レターパックプラス

5-3.窓口に提出する

窓口の係員がその場で受付番号を打ってくれたら登記申請完了。

申請を受け付けたことを証明する書類(受領証)を作ってもらうこともできますが、自分でする相続登記では必要になるケースはほとんどないでしょうから、ここでは省略させていただきます。

法務局は平日の午前8時30分~午後5時15分まで。12月29日~1月3日はお休みです。

6.本人申請成功のための7つのアドバイス

最後に、「司法書士に頼んだ方が結局は得だった…」ということにならないためのポイントを7つご紹介して、ご自分なりの判断基準を完成させていただきたいと思います。

6-1.法務局や市区町村役場が遠方にある

単純ではありますが、実は重要な判断基準だと思います。

登記事項証明書の取得、登記申請、戸籍・住民票・固定資産評価証明書・名寄帳の取得…。

管轄の法務局や市区町村役場が遠くにあると、各種書類を郵送で取り寄せるケースが増えます。郵送請求は一見便利そうですが、その実手間が増え、細かい応用が効きません。

例えば、市区町村役場に郵送請求をする場合、原則として支払いは定額小為替ですることになりますが、これがかなりのクセ者。郵便局の貯金窓口で売っていますから、平日の午後4時までしか買えません。100円の定額小為替を買うのにも100円がかかり(つまり100円のものを買うのに200円かかります)、有効期間の制限まであります。

被相続人と相続人の本籍地が同じでも、被相続人がかつて本籍地を何度も移していて、それが遠方なら、戸籍を集めるだけでもかなり面倒なことになります。

また、戸籍は現住地の市区町村の役場で集められても、相続する不動産が遠方にあると、登記申請の管轄法務局はその遠方になります。

5-3の窓口での申請も、管轄法務局に行くのに1日がかりになるようではなかなか難しいでしょう。郵送申請で対処しても、窓口に行かなければ補正できないようなミス(例えば、印鑑の押し忘れ)が見つかったら目も当てられません。

6-2.戸籍が読みにくい、つながらない

コンピュータ化前の古い戸籍は、記載の形式が違っていてかなり読みづらく感じます。形式だけでなく、民法そのものが現在とは違うこともこれに拍車をかけます。さらに古い筆書きのものになると、ほとんど古文書解読の様相を呈してきます。

また、戸籍がどうしてもつながらないこともあります。戸籍が空襲による火災で焼失しているケースが典型例です。

戸籍の附票を取っても、被相続人の登記事項証明書上の住所と戸籍上の本籍がつながらないケースもあります(3-2-5参照)。

こういった場合は、それにかわる公的な証明書や上申書などを手配しなければなりませんので、やはり、自分で相続登記をすべきか否かの判断基準になるでしょう。

ただ、戸籍は決して無駄にはなりません。発行から数か月内などという有効期間の制限はありません。まずは取ってみて、自分では無理そうなら、依頼した司法書士にそのまま渡しましょう。

6-3.マンション、抵当権…。登記事項証明書がややこしい

まずはマンション。マンションはおしなべて登記事項証明書が複雑です。少し考えてみてください。マンションの敷地や廊下や集会所は誰のものでしょう? みんなの共有物? ならば、それをどのように登記事項証明書に表現したらよいでしょう? どうしても複雑になってしまうことがお分かりいただけると思います。

さらに、昭和58年には、マンションの権利関係の拠り所となる区分所有法という法律に斬新な概念が持ち込まれたため、それを理解する必要も生じました。「マンションは要注意」と頭の隅に留めておいてください。

次に、他人の権利、例えば銀行の抵当権が付いている場合。そのままでも相続登記を入れることはできます。しかし、他人の権利は生きていますから、相続登記の後にその不動産を売却したり、担保にしてローンを組んだりはできません。

ですから、相続登記の際に、相続登記だけでなく他人の権利を消す手続をするのが一般的です。つまり、相続登記と抹消登記の総合的なスキームを組めるか否かが、自分ですべきか否かの判断基準となります。

そして、相続財産が複数あり、被相続人が単独で所有しているものもあれば相続人と共同所有しているものもある、さらにはそれらを入手した時点で登記してきたので、同一人物なのに登記事項証明書上の住所はバラバラ、などという場合。これもありがちです。

申請を数回に分けるか否か、前提として相続登記以外の登記を入れるか否かなど、こちらも総合的に検討しなければなりません。

6-4.相続登記をしないうちに相続人が亡くなっている

まずAがいて、BはAの相続人、CはBの相続人とします。

Aが亡くなった後、相続登記をしないうちにBが亡くなった状況を数次相続と呼びます。

例えば、Aにはマイナス財産ばかり、Bにはプラス財産ばかりという状況なら、一定の条件下でCは、Aについては相続放棄、Bについては相続を承認することもできます。実に観念的な話です。

一方、Bが亡くなった後にAが亡くなった状況を代襲相続と呼びます。

例えば、Bが養子だった場合です。AとBが養子縁組をした後にCが生まれたのなら、CはAの相続人ですが、AとBが養子縁組をする前にCが生まれたのなら、CはAの相続人ではありません。相続人の特定を間違えると、せっかくの登記申請も一発アウトです。

また、この6―4には別の角度からの問題点もあります。それだけ重ねて人が亡くなっているということは、最初の相続開始から長い年月が経っている場合が多いという点です。

民法は明治時代に制定され、たび重なる改正を経て今日に至っています。相続に関する部分は、特に多くの改正が入っています。

例えば、現在の法定相続分になったのは昭和56年1月1日からです。適用されるのは相続が開始した当時の民法ですから、昭和55年以前に亡くなった方の相続登記は、現在とは違う法定相続分がベースになるのです。

6-5.相続人の間で意見が一致していない

2-3で書きましたが、法定相続分通りになら、相続人の一部の方が他の相続人の同意を得ないまま相続登記を入れてしまうこともできます。場合によってはあえてこの手を使うこともあるようですが、かなりキナ臭い話ですから、自分だけで登記申請するのはやめておいた方がよいです。

相続人の一部が遺産分割協議に応じてくれないとか、遺産分割協議はしているもののなかなかまとまらないのなら、家庭裁判所に調停を申し立てる方法があります。

相続人が誰なのか、相続財産はどれなのか、遺言書はあるけれど本当に有効なのか、といった点に争いがあるなら、訴訟による解決を図る方法もあります。

どの選択肢を選ぶべきかは、弁護士に相談することをおすすめします。

6-6.兄弟姉妹やその子が相続人となる

子供がおらず、親やその上の代も亡くなっていると兄弟姉妹が相続人となります。この場合は子供や親が相続人となる場合に比べ、相続登記の難易度が上がります。戸籍を収集する範囲が一気に広くなるからです。

①被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍
②被相続人の両親双方が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍
③相続人である兄弟姉妹の現在の戸籍

②は、いわゆる半血兄弟姉妹(片方の親が異なる兄弟姉妹)がいないことを立証するためのものです。また、半血兄弟姉妹の法定相続分は、全血兄弟姉妹の1/2と規定されているので計算ミスも生じかねません。

さらに、場合によっては以下の戸籍も要求されます。

④被相続人の祖父母の死亡日が載っている戸籍
⑤相続人である兄弟姉妹が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍とその子供の現在の戸籍

④は被相続人の祖父母や曾祖父母が生存しているならそちらが兄弟姉妹に優先して相続人となるので、祖父母や曾祖父母が120歳を超えているような場合でない限り、ここまで立証する必要があるからです。

⑤は兄弟姉妹が相続人の場合はその子供(つまり甥や姪)が代襲相続するからです(6-4参照)。

6-7.相続人に未成年者・高齢者・外国籍の方などがいる

相続人の中に未成年者が含まれるのはよくあるケースです。その場合はもちろん、両親が代理人となって相続手続を進めることになります。もし両親ともいなければ、未成年後見人が選任され代理人となります。

問題なのは、未成年と未成年者の代理人がともに相続人となった場合です。例えば、未成年者とその親で遺産分割協議をする場面を想像してみてください。親のいいなりですべてが決まってしまうかもしれません。

ですから、このような場合は家庭裁判所に特別代理人を選任してくれるよう申立てなければなりません。ちなみに、特別代理人は伯父(叔父)・伯母(叔母)などの親族に頼むことが多いようです。

また、相続人の中に高齢のため判断能力が不十分で、遺産分割協議などはできそうにない高齢者がいるケース。この場合も家庭裁判所に申立てて成年後見人などを選任してもらうことになります。

他には相続人の中に行方不明者がいるケースも同様なのですが、このように家庭裁判所の力を借りる相続手続は、シンプルとはいえないかもしれません。

相続人が在外邦人や外国籍の方である場合は、相続手続の大まかな流れに変わりはないものの、書類集めの手間が増えます。そもそも印鑑を押すという概念は世界の中では珍しいですし、戸籍制度がない国も多いのです。大使館や領事館で代わりの書類を発行してもらわけければなりません。

逆に被相続人が外国籍の方である場合は、原則として被相続人の本国の法律に従うことになりますので、相続手続はさらに一筋縄ではいかなくなります。

7.まとめ

「やはり自分でできそう」と思った方もいれば、「思ったより面倒そう」と感じた方もいるかもしれません。

冒頭で、「相続に関わるヒトとモノがシンプルであれば」というただし書きを付けましたが、何をもってシンプルとするかが問題の所在です。

しかし、大丈夫。ここまでお読みくださったあなたなら、ご自分の感覚を信じてご判断ください。それがベストの選択になるでしょう。

あなたの権利を守るための相続登記—。この記事を参考にしつつ、納得できる方法で申請していただけたら幸いです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

司法書士による無料相談実施中!

八王子市内はすぐに駆けつけます。


どのようなご相談でもお気軽に

司法書士 むらの事務所までお問い合わせください。


tel: 042-642-0066

お電話はこちらへ


平日9:00~21:00

※ ご予約にて土日祝日・夜間の相談も承ります。



メールでのご相談

コメントを残す

*